3シエラと不死とウサミミ

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 数歩も進まないうちに、彼女は馬車に連れ戻された。  派手な逃走劇。離れていた見張りはすぐに気づいたに違いない。    今日のために雇われたのだろう。立派なのは体格だけ。下品な男二人が出入口に立っている。 「鍵、かけ忘れてたんだなぁ俺。お嬢ちゃん、残念だったねぇ」 「何か生贄増えてるけど?」 「良いんじゃね? 多い分にはウワサの姫様も納得してくれるだろうよ」  ニタニタと汚い笑みを浮かべると、男の一人が内部を確認する。飛び入りの新人には興味はないようで、先ほど捕らえたシエラへ視線を移す。 「足りない頭で考えて、この馬車には嬢ちゃんしか乗らないように仕組んだのになぁ。まぁ、良いか」  男の一人がシエラの腕をまとめあげ、手首を掴み、片手で拘束する。空いた掌が汚らしく服の上を這った。身体のラインを確かめながら、男は息荒く彼女に迫る。  シエラは恐怖のあまり抵抗できずにいた。指先が震え、全身に力が入らない。悪夢のような展開に、目をつぶりやり過ごそうと構える。 「ちょっと。私を除け者にしないでくれる?」  セラは興奮する男に近づき、押さえつける腕を掴んだ。 「ああ? 何すんだおまえ」 「よく見て。その女より、私の方が容姿が上よ。せっかく楽しむのなら、美人の顔を歪ませた方が興奮するってものじゃない?」  ちっ、と雇われ者の舌打ちが、やけに大きく響く。後ろで控えていた屈強な男が、獲物を狩る熊のごとく、セラの首を鷲掴んだ。 「おうよ。じゃあ早速、そうさせてもらうぜ」  白い首筋に太い指が食い込む。 「おい、お前。やりすぎんじゃねぇぞ」 「分かってるよ」  ギリギリと万力を締めつけるように。男のくすんだ爪が食い込み、血が滲みだす。セラの唇から漏れる空気はだんだんと細くなり、全身がだらりと弛緩する。 「苦しいだろ。止めて欲しいだろ。命乞いしてみたらどうだ?」 「お前馬鹿だろ。そんなに締めてちゃ、命乞いできないって」  ゲラゲラと下世話な笑い声が重なり合う。
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