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「……は」
気管から酸素の抜ける音。男二人は絶命の迫る少女の変化を、見落とさなかった。
にやり。
口角が、上がる。
吹き出た涎に塗れた唇を妖しく光らせ、セラは微笑んだ。
それは絵になる美しさと、背筋を凍らせるおぞましさ双方を含んだ、異様な笑みだった。
「この……!」
「おい、よせ!」
少女の表情に恐怖した男は、反射的に首にかける圧力を強めた。仕留めたはずの猛獣に、足元をすくわれる感覚。打ち破るには、猛獣をいたぶるしかない。
もっと、もっと。そうして損壊した死体を前に、金星を得たのだと納得するのだろう。
セラは死んだ。
首の骨が折れたのだ。頭がだらりとおかしな方向へ落ちる。
首を締めていた男は指先を緩めた。ごとん、と無機質な効果音と共に遺体が床に転がった。
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