2世界王の姫君

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 騒動は、レオがデザートのたっぷり生クリームプリンを半分食べ終えた頃に起こった。 「嫌だよ! 何で私なの!」 「うるさいよ。他の人の迷惑になるだろう」  親子喧嘩。ふくよかな体格の母親と、お下げ髪がかわいらしい少女が揉めている。  店内の中央に位置するテーブルで始まった争いは、治まるどころか悪化するばかり。  仲裁に第三者が何人も入り、何事かと人垣ができる。セラとレオは席から離れず、遠巻きに様子を伺う。  何も自らトラブルに巻き込まれる必要はない。ほとぼりが冷めた頃、退店すれば良いだろう。 「私、毎日良い子にしてたじゃない! なのに姫君への生贄に選ばれるなんて、どうしてなの!」 「静かにしないかい! これは決まりごとなんだ! 理由なんてないんだよ!」  二人の会話に、周囲の反応が分かれた。首を傾げる他の土地から来た者。眉を下げる、街の住人。 「イケニエだなんて、物騒ですね、姫様」  瞬間、レオはしまった、と口を噤み、言い直す。 「じゃなくて、って……あれ?」  目の前によく知る旅の連れはいない。視線を泳がせると、騒動の群れに入るセラの姿がある。 「えええ、何やってるのあの人は。全く、もう」 立ち上がった。セラの後にそっと寄り添い、状況を確認する。 「生贄って、何のこと?」  騒ぎの後方でたむろする数人の女性。事情を知っているのか、ひそひそと囁き合うのをセラは見逃さなかった。 「あなた、旅の方?」 「そうよ。生贄とは何のこと?」 「何って、姫様の生贄よ。あなたも聞いたことがあるでしょう。世界王の姫君よ」  
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