2世界王の姫君

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 世界王の姫君とは、古くからの言い伝えだ。  世界を平和に導いた王が、一人の姫君に狂い、世界中に不幸を撒き散らす、何とも冴えない話。  二百年前、ある若者が世界を滅ぼす魔獣を打ち倒す。  若者は英雄となり、全ての民から信頼され、人々の頂点に上り詰めた。  世界王の誕生である。  王には溺愛する姫がいた。  姫は病から床に伏してばかり。彼女を救いたいばかりに、王は禁忌に手を染めた。  捕らえた神を煎じて、姫に与えたのである。  あまりの冒涜に世界中が憤怒に包まれた。王は民の手により虐殺され、狂気は姫にも及んだ。  しかし姫は生き残った。  神の力で、不死となっていたのである。    神なき世界は混乱し、悲しみと争いが溢れた。  生き残った姫は今もどこかをさ迷っているという。
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