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 そう。九十歳である。書き間違いではない。見た目こそ三十代中半に見える彼が、そのような外見に見えるのは、地獄人の性質という地球人からしてみれば、うらやましいことこの上ないものが、彼ら地獄人には生まれたときから備わっているのだ。 「いえ、他の惑星の人型生物です。他国の鬼ではありません」  よく通るしっかりした声を出すナオミはモトハルの直属の部下である。黒いショートカット。小顔。切れ長の目。一本の垂線を引いたかのような綺麗な背筋。新品かと思わせるぐらいに、しっかり手入れされている紺色の着物に身を包む彼女は、小柄だが優秀な仕事振りを発揮してきた功績を持つので、モトハルからは絶大の信頼を寄せられている。  彼女の見た目も実年齢以上に若い。一見すると中学を卒業したばかりの少女にしか見えない彼女の年齢は、今年でなんと三十五歳になる。  地球上で彼らに匹敵する外見年齢を持った人間はさすがにいないだろう。それぐらい地獄人達は外見年齢が地球とは大きく異なっており、寿命も平均が百七十歳というのだから驚きである。 「地球人って、そういえば昔習ったなぁー」  モトハルと同様に、ナオミも自分の部下からその手紙を渡された際、地球人という言葉に対し、どこの原住民だったかしらと勘違いをしていた。     
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