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 だからそうした歴史的事実は暗記させられていても、そうした事態に対する対応力は少しもついていない。大統領交代の際にも、モトハルは前任の大統領の背後を支えていた鬼と話をする機会を設けてもらい、多くの不安要素に対応する為のアドバイスを貰うことはできたが、他の惑星との間で発生したトラブルの対処法などは一切知らされていないし、そんなものが必要などとはモトハル自身微塵も思っていなかった。  ――とりあえず、まずは確認だな。  意を決し、ナオミの前でモトハルは封筒を開ける。彼女は無言で彼の方を見ているだけで立ち去ろうとはしない。二人共他の惑星からのメールということに、ごく僅かだが緊張している。内容次第では、すぐに二人は話し合いの場を設ける為に動かなくてはならないのだ。 「……」  モトハルは封筒の中身を開け、メール文を引っ張り出して目を走らせる。その目の動きを無言で見つめていたナオミ。モトハルは最後の文章を見終えた瞬間、すぐにナオミの方を向いて申し訳なさそうな顔をした。 「……すまない」  モトハルの発言に、やはりそうかとナオミは肩を落としたくなった。すまないというのは、明後日から始まるはずだった彼女の休暇がなくなるという意味であった。  ――地球人め  そうナオミは心の奥底で未知の惑星に住む異星人(エイリアン)を恨む。しかし彼女は、そういった気持ちは決して顔には出さないようにした。 「地球人からの宣戦布告だ。五年後にこの惑星を侵略するつもりらしい」  厄介なことになったなと、顔を曇らせたモトハルはメール文の日付を見て目を丸くする。 「五年後に……ですか? 数ヶ月後とかではなくて?」     
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