2人が本棚に入れています
本棚に追加
音が響いている。その音を聞いたことがあるのか、ないのか。
その判別は僕にはつかないが、少なくともいい気分になれる音ではなかった。
なのに、僕はその音に突き動かされるかのように歩き出す。
もしくは、導かれているのか。
そのどちらが正しいのかという事さえも、僕にはわからなかった。
太陽がジリジリと照りつけている。砂嵐が吹き荒れている。
昔、多くの人々が渡っていたはずの、この交差点に、人々の姿はもう見当たらない。近くにあるビル群もきっと同じなのだろう。
乱雑に立ち並ぶビルからは、人の気配を感じない。
「大都市」と言っても過言ではなかったこの街は現在、人ではなく、多くの機械が闊歩している。
機械というよりも、ロボットと言った方が正しいのかもしれない。
多種多様なロボットが人のかわりにこの交差点を行き来している。
この街の中心には、巨大な塔のようなものがあり、そこからモクモクと煙が立ちのぼっている。
それが何なのか僕にはまだわからない。
空は、灰色に覆われ、空気はお世辞にも綺麗とは言えない。
人が生活するとしたら、相当な悪環境だろう。
昔の人達はこうなることなんて全く予想出来なかっただろうな。
原因は、これだ。僕は足下にある、風で運ばれてきたであろう、古新聞をみる。
そこには大きい見出しで、「爆発の余波により、人類滅亡の危機!」と書いてあった。
横には研究者の見立てと、手で顔を覆い、絶望に打ちひしがれる人々の写真が載せられていた。
21××年。
科学技術が発展し、ロボットの大量生産が行われていたが、突如として、近くの恒星で予測の出来なかった超新星爆発が発生。地球上のあらゆる生物を襲った。
地上は放射能汚染により生物が住める環境ではなくなり、主要都市は壊滅。
シェルターなどに退避し、なんとか生き残った残り少ない人類も「放浪者」となり、生きるための食料などを求め、世界中を転々としていた。
ここも、昔は「トウキョウ」なんて呼ばれていたらしいが、今は名前なんてない。
そもそもこんな廃墟同然の場所をわざわざ呼ぶ必要も、それが出来る人間だって、もうほとんどいない。
最初のコメントを投稿しよう!