気がつけば100P目突入だったのねw

21/37
前へ
/196ページ
次へ
 両腕をすっと組み、頭を振って背中まで伸ばした髪をなびかせた義兄さんが、千秋の言葉にアシストする。 「本当に誰ともヤってないっ、信じてくれ千秋」  義兄さんの言葉を打ち消すように、一生懸命に言葉を紡いだ。しかし首を横に振って、ポロポロと涙を流す。 「信じたい。だけど心の中にいるもうひとりの自分が、信じられないってずっと言ってる」  千秋は静かに告げるなり、後ろにいる義兄さんを見てから、俺に視線を移した。どこか虚ろで悲しげな瞳に、胸が絞られていく。 「血は繋がっていないけど兄弟なのに関係をもったり、お客さん獲得のために何でもするという過去を聞いてしまったから、余計に不信感が募っていったのは事実だよ」  言いながら右手を胸の前で苦しそうに、ぎゅっと握りしめる。痛々しすぎるその姿を目の当たりにして、より一層言葉をなくしてしまった。浮気をしていないと千秋に伝わるまで、何度でも言葉にしたかったのに。 「一緒に暮らしたいからって、ホストの仕事を始めたでしょ。だけどね、それ以前はそういうやましい関係を、他の人としてるとは思わなかった。だから穂高さん――」 「なんだい?」  涙を両手で拭いながら、真剣な眼差しで俺に頼みごとをしようとしている姿勢に応えようと、心と一緒に耳を傾けた。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加