17人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺が料理人として一人前になる修行をしてる間に、和馬も経営の勉強をしてると聞いて、胸が打たれてしまったのだぞ。心が震えてしまって、言葉では表現出来ないくらい、嬉しくて――」
口を真一文字に閉じ、左手を自分の胸に当て、右手を俺に向かって差し出してきた。
「あのときは差し出した手を取ってはもらえなかったが、今の俺のこの手を、取ってはくれぬだろうか? パートナーとして、ずっと隣にいてほしいのだ」
言いながら更に、右手を差し出す。その手を、じいっと見つめてしまった。
高校生だった俺は、この手を握ることが出来なかった。アンディの将来を考えたら、取るべきじゃないと判断したからだ。だけど今は――。
「後悔したって知らないからな。あとからグチグチ、文句を言うなよ」
差し出してくれた右手に自分の手を重ねたら、逃がさないといわんばかりの圧力で、ぎゅっと握りしめる。
「和馬、俺の……。俺の生涯のパートナーに、なってくれますか?」
手を取ったのにも関わらず、更に訊ねてくるなんて――しかもいつもの口調じゃなく、真面目な感じで告げられたので、ぶわっと頬が赤面し緊張してしまった。
たったひとこと、言ってやればいい。分かっているのに、安易に口に出来ないのは、先の見えない将来への不安からだった。
「えっと……」
「……俺はもう2度と、この手を離すつもりはない。お前を守り、愛しぬくことをこの身に誓った。覚悟は決まってる!」
自分の胸をばんばん叩きながら、満面の笑みで微笑みかけてくる。こんなにムードのある告白シーンだっていうのに、アンディの表情はどこか、いたずらっ子みたいな顔をしていて。
俺はこの顔が結構好きなんだよなって、改めて思わされてしまった。そんな気持ちを悟られるのが恥ずかしくて、いつも誤魔化してばかりいた。
煌くイルミネーションをらアンディを通して、ぼんやりと見つめる。
綺麗な色した金髪に、スカイブルーの瞳を持つ整った顔立ちは、俺には勿体ないと思ってしまうレベルのものだけど、オマケとして性格にちょっとだけ難がある。
……だからこそ俺が、傍にいてやらなきゃならないんだよな!
「Yes。どうか俺を、アンディの傍において下さい」
最初のコメントを投稿しよう!