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僕が100%悪いのは、明らかな事実。下手な言い訳をしないように、慎重に口を開く。
「情状酌量くださいなんて言いません。笹木に手を出した僕が悪いんですから」
最悪の事態で逃げられない――だからこそしっかりと向き合って、正々堂々としてやろうじゃないか。
奥歯をきゅっと噛みしめて、普段している顔を作ってやった。
「ほぉ……その顔は、腹をくくったといったところか。どんな顔をしても悪人面に見えないところが、私とは違って香坂の利点だな」
「恐れ入ります」
「最初から私の笹木に手を出していたのは、分かっていたがね。お前が笹木の家で呑んだ次の日、会社で逢った時点で気がついていたよ」
(ああ……下田先輩の遺品を片付けていた、あのときか――僕の姿を見て、雰囲気が違うと指摘してくれたっけ)
刺すような視線が、僕から笹木に向けられる。
「なぁお前はどうやって、香坂に落されたんだ?」
「待ってください。どうして笹木に、そんなことを聞くんですか? 終わったことを知ったって、何の特にもならないでしょう?」
「何でって、私から香坂に鞍替えした理由が、素直に知りたいだけだ。元彼としては、正当な理由じゃないか」
そんなの知ったところで、笹木が戻ってくるワケじゃないのに。真実を知ったら間違いなく、安田課長がキズつくだけだろう――
「そこにあるソファで、香坂先輩にキスされました」
「笹木っ!?」
「抵抗したらネクタイで後ろ手に縛られて、それから――」
「やめろって! あのときのことを言う必要が、どこにあるんだっ」
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