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「香坂先輩がそこにメモを入れたのは、そういう理由があったからなんですよ。俺の気持ちを知ったから、安田課長と別れさせるべく浮気の証拠を作った」
(ちょっ、何を勝手に話を作っているんだコイツ――)
「そうなのか、香坂?」
――違う。僕はこのふたりが揉めて、罵り合う姿を想像したかった……。
僕と同じようにボロボロになって、キズつくところが見たかっただけなのに。他の意味なんて、まったくない。
一瞬目を伏せて、次の言葉を考える。
今1番キズついているのは、目の前にいる安田課長だ。そんな人に、べたべたと塩を塗ったくったりしたら、間違いなくそれを倍増した状態でお返しをされるであろう。
それだけは、絶対に避けたい――。
意を決して伏せていた視線を上げ、当たり障りのないことを口にしようとしたら、いきなり笹木がテーブルの上に突っ伏した。
「ううっ、ひっ……」
「おい、笹木?」
この場に似つかわしくない様子に恐るおそる声をかけたら、半泣き顔を見せてくれる。
「ウゲッ」
その感じが、かなり前に釈明会見をした元議員にモロ被りしてしまい、固まるしかなかった。
「どるあぁあ……うっ、ひぃいいんっ!」
「おい笹木、みっともないぞ」
あまりの姿に安田課長が声をかけたが、呻き声をあげるばかりで会話にならない。
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