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うわぁとドン引きしてるところに、安田課長が顎で何とかしろと無言で指示をくれたのだが、両手を挙げて首を横に振ってやった。
大泣きしてる男を何とかしろとか、僕には無理な話なんだよ。慰めの声をかけたら抱きつかれそうだし、どうしたものか……。
(――とりあえず、その涙と鼻水を処理してやろう!)
安田課長の言葉から、まずは見た目を何とかすべく椅子から腰を上げ、カラーボックスの上に置いてある箱ティッシュを手に取り、笹木の前に静かに設置してやった。
「お、おい。これで涙を拭けって。安田課長が心配してるぞ」
「うっ、ううっ、くっ……ミノは、心配してくれないんですか?」
素早く何枚かのティッシュを取り出し、顔を拭いながら、じと目で僕を見上げてくる笹木。
「やっ、その……あー心配してるよ、勿論」
安田課長の手前、一応心配そうなフリをしなければならない。いつもの自分なら、バッカじゃねぇのと嘲笑っているところだ。
「ぅわーんっ、やっぱミノは優しぃ……らからおぃはアっ、ひっく…ナタのことが、ううっ…好っ、うっ…きなんで…ひっく、すよ」
(だから俺は、アナタのことが好きなんですよ)
最初の方はかろうじて聞き取れたが、後半のセリフはサッパリ分からん。
「こぅしゃか、ひっく…しぇんぱいは、ンっ悪くない、むしろ、俺がう、ううっ、悪っ、いんれすっ。香坂うっうっ……先輩がしゅき、っなのに、やすら課長ひっ、えっぐ…と付き合ったり…ズビズビ、うっ、したかりゃ。ひっくひっく、おふたりを…んっ…キズつけたのは、おぃ…本人なんれす」
(香坂先輩は悪くない、むしろ俺が悪いんです。香坂先輩が好きなのに、安田課長と付き合ったりしたから。おふたりをキズつけたのは、俺本人なんです)
号泣しながらテーブルをばしばしと手のひらで叩き、熱く語ってくれたけれど、何を言ってるのかまったく分からない。
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