気がつけば100P目突入だったのねw

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*** (不機嫌なままだけど素直に告げたお前の言葉に、俺の心が鷲掴みされとるわ――) 「そうか。俺もその景色が見てみたいから、ここに立ってみ」  繋いてる手を引き寄せ、桜の木の前に立たせてやった。 「お前が笑顔で俺のことを好き言うたら、満開に咲いた桜が見られそうなんやけどな」 「そんな……」 「できひんよなぁ、度胸のないお前がこんな場所でそないなこと」 「できますよ! バカにしないでくださいっ」  そう言い切るなり、繋いでいた手を引き寄せて甲に唇を押し当ててきた。柔らかい有坂の唇を肌で感じて、躰がカッと熱くなる。 「要さん、大好き」  俯き加減で目を閉じて告げられた言葉は、しっかりと耳に届いていた。  頬を撫でる冷たい風を感じた瞬間、艶やかな満開の桜が有坂の背後に咲き乱れた。それは大阪で見た、一番綺麗だなと思った八重桜やった。  散っていく花びらの多さが自分の気持ちを表しとるみたいで、それがはらはらと有坂に向かって降り注いでいく。  これは幻覚だし有坂にはそれが見えないだろうけど、普段から俺はたくさんの想いをこうやってコイツに与えているんや――伝わらない想いを少しでもええから感じてほしいと思うんは、ワガママだろうか。
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