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【恋のマッチアップ】
***
クラスで仲のいい友達に誘われて、小学生からバスケをやってきた。市内にある少年団のクラブを経て、中学でも迷うことなくバスケ部に入り、それなりに活躍した。お蔭で全国大会の試合でスタメン入りし、その流れで高校は推薦で入学。
中学同様に活躍できると思っていた。あのときまでは――。
「昨日寝坊しちまってさ。講義に出られなかった分のノート、悪いけど写させてくれよ」
机に頬づえをつきながら足を組んでこちらを見据える姿は、人にものを頼む態度にまったく見えない。むしろ、どんどん不快感が増していった。
「俺じゃなく、他のヤツに頼めば」
「チームメイトのよしみで頼むって」
早く差し出せといわんばかりに、左手を見せる。
加賀谷将紘(かがやまさひろ)――容姿端麗なこの男は、特待生としてこの大学に入学してきた。
イケメンで背がそれなりに高く、どんなところからでもシュートを確実に決める、黄金のレフティを持つバスケ選手だった。
だからこそバスケ部ではエース級の存在になれるというのに、面倒くさいのひとことで練習をズル休みする。大学の講義もまたしかり。特待生で大学に入ったとは思えないこの態度も、人としてどうかと思われる。
俺はずっと続けてきたバスケの技術をあげたくて、ここに入学した。
県大会で何度も優勝している大学での練習は、とても勉強になるものが多い上に、講義内容もメンタル面の強化に役に立っている。スキルアップを図るべくして、眠い目を擦りながら、毎日大学に顔を出しているというのに。
「練習に参加しないヤツが、チームメイト面すんなよ」
「だってここでの練習って、ダルくてやってらんねぇし」
「俺だっておまえのために、講義に出ているわけじゃないんだからな!」
教員がくるまであと少し。なんとかして、この男を隣から追い払いたかった。
「知ってる。写させてもらうお礼に、間違ってるとこをきちんと直してやるからさ」
バスケがうまいのもさることながら、めちゃくちゃ頭がいいというのを、同じ高校から入学したチームメイトに聞いていた。講義を受けていなくても、渡したノートを見ただけで、その内容を理解できる能力はうらやましい。
凡人である自分を恨みながら、差し出されている手にルーズリーフ数枚乗せてやった。
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