娘、ケージを組み立てる

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 尚史自身、犬にはあまりいい思い出はない。  小学校低学年の頃、幼馴染みが親戚の家で飼っている雑種の犬に手を噛まれて、全治一ヶ月の怪我を見せてもらったり、その時の状況を迫真の演技を交えて教えてもらったため、犬は怖い生き物だという刷り込みがなされてしまった。  他にも小学校高学年の頃だったかな、祖母の友人宅に一緒に遊びに行った際に、そこのお宅で飼っているチワワが尚史の尻の匂いを嗅ごうとしつこくジャンプしながら追いかけてくるという恐怖を味わったのである。  ちなみに我が家の子供たち長男長女も、友人宅で飼っている躾の行き届いていない真っ黒なゴールデンレトリバーに飛びかかられるということをされているため、『犬を飼いたい』と言ったことがない。  尚史の実家で猫を飼っている影響もあり、犬を飼ったことのある相方以外そろって猫派だった。  それなのに、子犬を買ったのである!  それでも買った以上は必要最低限の面倒を見ようと、自宅に連れ帰ってからは小春にコンセントを噛まれないような処理を尚史が施し、娘はケージを組み立てるべく段ボールからそれを取り出し、説明書を見ないでいそいそ作り始めた。
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