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実妹が娘と同じ高校生のときに、父が知り合いから猫を貰ってきた。
某デパートのペットショップが、何らかの病気に汚染された関係で店を閉鎖。売っていたペットたちがブリーダーさんに返品されて困ったところに、父が手を差し伸べたという経緯があった。
しかし当時住んでいたところが道営住宅のアパートで、ペット厳禁な場所なのと、尚史がアレルギー持ちで猫の毛が駄目な可能性もあるなど、いろいろ問題を抱えていたのである。
それなのに父の夢だった『白い猫を飼いたい』と実妹が無類の猫好きを利用してふたりがタッグを組んだことにより、自動的に猫を飼うことになった。
やって来たのは血統書付きのペルシャ猫のオス。餌のときだけ鳴くというものすごく大人しいヤツだったので、迷うことなく首輪をつけて存在感を出した。
父の母、つまり祖母が同居していたこともあり、名前は外国人のものを避けた妹が「メスならひばり、オスなら裕次郎に決めてるの」と宣言していたので、『裕次郎』に決まったのだった。
祖母を気遣った実妹の名づけセンスに、社会人だった尚史はほほぅと内心称賛したけど、口にして褒めたりしなかった。理由はあまり仲が良くなかったから。
今にして思い返してみると、どうして仲が良くなかったのかも不明だったりする。
その後、アパート住まいから一軒家に引っ越し、その後すぐに結婚のために家を出てからは、裕次郎と関わることがなかった。
数年後、長男が生まれてからは毎週帰ることになる(孫を見せろと両親がうるさかったため、仕方なく帰宅していた)
裕次郎はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。
それまでは自分がアイドルみたいに扱われていたのに、皆が手のひらを返して長男を溺愛しはじめたせいで、機嫌が悪いのを表すように眉間にしわを寄せていた。
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