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それなのにだ、購入して3日目に布地を引っ掻いて口で破り、中身の低反発っぽいクッション部分を露にした――。
もう縫い合わせる気にもなれなくて、そのままにした。当然布地が日々破れていくが、中身が飛び出ることがなかったので、よほどのことがない限り買い替えしないもんねという態度を小春に表した。実際表したところで、伝わらないけどね。
何が気に食わないのやらと、娘とともに頭を捻っていた8月1日。ベッドに血がついていることに気がつく。
玩具の噛みすぎで、いつものように歯ぐきから出血しているのかしらんと思っていたところに、床にもめちゃくちゃ少量の血が点々と落ちていて、まさかと察したからこそ小春を横抱きにして股間を観察した。
見慣れていた股間がかなり腫れて形が変わっているだけじゃなく、いい感じに出血しているではないか!
「おう、ヒート(生理)がきてしまった」
生まれてまだ1年も経っていないというのに、大変な体になったもんだ。
そういや実家で飼っていた裕次郎も、発情したのがこれくらいの月齢だった気がする。
真夜中のリビングから「ぁあおぉおん」という変な声と一緒に、首に付けた鈴がチリンパチリンパ音を立てていて、たたん、たんたんというリズミカルな足音が聞こえていた。
呪いの五寸釘の儀式かよと、内心馬鹿にしながらその音を聞きながら眠りについた次の日、妹に起こされて現場に引っ張られた。
前日までは遊び仲間兼喧嘩仲間だった三毛猫のぬいぐるみのミーさんの首根っこをかじりながら、一心不乱に腰をかくかく動かしている裕次郎の姿があった。
ベストポジションを確保するためなのか、ときおり足をリズミカルに踏みしめていて、真夜中の音の原因がそれで分かってしまった。
左右を人間に囲まれて観察されているのに、そんなの知らねぇよと行為を続行する裕次郎に、以前のようなピュアな面影がなかった。まぁこれがきっかけで去勢したのだが、たまに思い出してはミーさんを襲っていたのが懐かしい。
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