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剣呑な目つきで傍らの『いばら沼の魔女』ケレブリアを睨みつける。
ガリナヴァル王国内では殆ど目にすることが無いカラスの濡羽のような黒髪に、黒曜石のような瞳。白く透けるような肌はまるで死人のよう。
瞳に宿る妖しげな魔の力は、屈強な戦士さえ怖気づかせる。見た目は一見すると妖艶な美しさを湛えた少女のようでもあるが、暗黒の魔術で若さを保っているとも、うら若き乙女の肉体を乗っ取ることで若さを保っているとも言われている。
「そりゃぁ、とんだ言いがかりだねぇ騎士様よ。私を、安らかなる結界の奥深くから引きずり出したのは、お前さんたちじゃぁないか? 上をごらんよ、あの竜の昼飯に仲良く収まる運命のようだよ」
手枷ごと鎖を引きずり、ヨタヨタと歩く魔女の紫のドレスも擦り切れ汚れている。
「魔女の魔力に引き寄せられて、紫黒竜が来ること自体、お前の魔力の招いた災いだろうが!」
「だから私は隠れ住んでいたんじゃないか? どこかの正義感に燃える騎士様が余計なことをしてくれたお陰でこの有様さ! いい気味さキャハハ」
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