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巨大な空飛ぶドラゴン・紫黒竜の襲撃により、魔女ケレブリアの護送中だった馬車は襲撃を受け、魔女も騎士も投げ出された。
魔女ケレブリアは、西の領有地で乙女をかどわかし血を吸ったとされている。騎士ルィン・イングロールたちはその討伐と身柄の確保に赴いた……その帰り道だった。
「騎士様、騎士様! おぉ! ドラギュケイヴが来るよ! さぁ王国の偉大なる騎士様よ! 意地をみせておくれよ、でないと私もお前さんも死ぬんだよ……? キャハハ」
まるで自分の死さえ見世物のように思っているのか、徐々に高度を下げてくるドラゴンを指差し嘲笑う。その異常さに、悪寒と苛立たしさを覚える。骨折の痛みと重量のある騎士の鎧がズシリとルィン・イングロールの体力を奪ってゆく。
「う、うるさいッ! ドラゴンなど剣――」
次の瞬間。黒く生臭い風が騎士ルィン・イングロールと魔女ケレブリアの目の前を吹き抜けた。ゴファ……! という黒い風が過ぎ去ると、再び草原と空が見え、そして真っ赤な何かが空中に噴水のように散った。
それが騎士の右腕があった位置から吹き出す血だと、気づくのに瞬きほどの時間を要した。
「ぐッ……ぁあああああああッ!? 腕が……ッ!」
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