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 突然、道隆の目から大量の涙があふれ出た。  悲しい・・・苦しい・・・  次から次えと、感情が湧き出てくる。  イヤだ、イヤなのに、涙が・・・  尚も、母親との記憶が甦る。  小1の夏、転んで膝を擦りむいた道隆。  涙で顔が、グシャグシャだ。  痛い、悲しい。  でも、母が、涙をぬぐい、足に伴奏弧をはり、  足をさすってくれた。抱きしめてくれた。  うれしい。気分がすっとしていく。  小3の秋、道隆が料理に失敗した時も。  くやしい。へこむ。泣きそうだ。  でも、母が、やさしく励ましてくれた。  一緒につくりなおしたっけ。  うれしい。楽しい。なにより、おいしい。  もっと、もっと・・・  あれ、と、道隆は気づいた。  感情こそ無駄と思っていたのに。  記憶こそ邪魔なものと考えていたのに。  これって、無理に封印しようとしてただけなのか?  感情だって悲しいだけじゃない。  記憶もイヤな思い出ばかりじゃない。  こんな当たり前に気づかないなんて。
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