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「おはよ昴! 今朝もなんだか辛気臭いねー」
乾いた空気を引き裂くように声の主は僕の肩を叩いた。
叩かれた背中がじんじん痛む。
おかげでさっきまで考えていた色んなものが頭からすっ飛んでいった。
「いたた……おはよう、星野。君は朝から元気だね」
この子は星野朱里。僕のクラスメイト。
ちょっと力加減が出来ないみたいだが、とても真っ直ぐでいい子だ。
その名の通り、星の明かりみたいな子だと勝手に思っている。
「そうかなぁ? 昴が暗すぎるだけだと思うけど。教室まで一緒に行こ!」
高校三年間同じクラスだった星野とは家の方向が一緒ということもあり、よくこうして登下校を共にした。
他人と話すのはあまり得意じゃないのだけれど、そんな僕にも気楽に話しかけてくるような子だ。
今では気兼ねなく話すことが出来る、貴重な存在となっている。
「……うん。行こうか」
二人並んで歩き出す。
そういえば、後何回この道を通ることになるのだろう。
まだ指折り数えるほどではないと思うけれど、そのうちいつかは必ず、ここを毎日通ることはなくなるんだ。
そう考えると少し寂しい気もする。
「星野は、結局進路どうしたんだっけ。なんかこの一年すごい悩んでいた気がしたけど」
「んーと、結局大学はいかない事にしたんだよね。やっぱりお金掛かるし、うち片親だしさ。……だから近所のスーパーに就職することにした。昴は?」
さらっと自分のことを話し終えると、星野は僕に同じ質問をした。
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