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「僕は……えっと」
思わず言葉に詰まる。
勉強はしていた。
元々出来る方でもある。
だから進学を希望すると書いて、そこに向けて受験勉強もしている。
でもそれだけだ。
明確な目的や理由もないまま、両親に多額のお金を払ってもらい進学するのは少し気が引けた。
だからといってこのまま就職というのもどうなのかなと思う。
進学しないのなら早々に働くべきだとは思うが、どんな仕事にするべきなのか、一体何が自分に向いているのかも、解らなかった。
将来の事など、真面目に考えた事がなかったから。
だから、誰かに言われてなんとなく進路を決めた。
「……あれ、私ひょっとして変なこと聞いちゃったかな? あっはは……ご、ごめんね、ごめんなさい! わ、私でよければ相談に乗るからさ、 ね、元気出そ?」
「なに慌ててんのさ」
「だ、だって……」
何を勘違いしたのか、星野は一人で顔を赤くしながら忙しなく動いた。
普段あまり見ない彼女の姿に、思わず吹き出してしまう。
「……もう、人をおちょくって楽しむなんて、性格悪いよ昴」
「ゴメンゴメン」
星野の色んな表情を見て、沈んでいた気持ちがいつの間にか明るくなっていることに気付く。
こういうところが彼女の魅力だと思う。
「あぁでも、もしも都合がつくなら今度本当に相談乗ってほしいかもしれないなぁ」
そう言うと、星野はまたあからさまに動揺した。
「え? ……あ、ああいいよいよ全然オッケー! 私でよければーだけど……そんじゃあ善は急げってことで……今日の放課後、とか!」
「本当に急だね。別に無理しなくてもいいよ」
少しだけ言わなければよかったと後悔した。
きっと星野は、本気で僕のことを心配してくれている。
僕自身がこんな中途半端なままでいるというのに。
「無理なんてしてないよー。あ、でもその時はマック奢りね」
「いいけど………いいの?」
「いーよー。どーせヒマだったし」
背中で手を組んで僕の顔を覗き込みながら、星野が朗らかに笑う。
どんな顔をしたらいいかわからなくて、僕は彼女から目を逸らし、遠くの方を見るフリをした。
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