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今朝そんなことがあったものだから、少しだけ浮き足立っていた。
自分自身でもはっきりと分かるほどに。
時代遅れのブラックボードを眺め、先程の授業中で書ききれなかった分をノートに書いていく。
その間も、この後のことを考えていた。
彼女と何を話そうか。
流石に心中をありのまま吐露することは憚られる気がする。
だからといって全て嘘で貫き通すのも苦しい。
いっそ彼女の話を聞くことにしようか。
いつの間にか長い付き合いになってはいるけれど、彼女のことは通学途中の道で少し話を聞いたくらいのものだし。
いい機会だから、もう少し深く知る場にするというのもいいのかもしれない。
あぁでもそうすると、彼女は間違いなく僕にもそう言う話をしろと要求してくるだろう――。
「――ご、ごめんなさい!!」
昼休憩、一人悶々と今日のことを考えながらご飯を食べていると、星野が現れた。
そして両手を顔の前で合わせて謝罪の言葉を告げる。
どうやら別で約束していたのを忘れていたそうだ。
真面目だが、どこか抜けている彼女らしい。
いや、違うか。きっと近付き過ぎたんだ、僕は。
今までのことを思えば彼女がそんな人間ではないと信じたいけれど、仮に彼女がそうでなかったとしても、その周囲はどうだろうか。
星野はあんな性格だから友達も多い。
例えば、彼女が別の誰かに誘われて、ぽろっと僕の名前を出す。
「あんな奴いいから」とその誰かに言われる。
その誰かはきっと、僕よりもずっと彼女と親しい間柄だ。
どちらを選ぶかなんて、わかりきっている。
ああ、僕なんかが調子にのって高望みをしたせいで、彼女に不快な思いをさせてしまった。
ゆっくりと息を吐き、声を作る。
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