変化の直前

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変化の直前

「皆も知っているように、明日年号が変わります。受験や就職の提出書類に関わることも多いので十分に気を付けるように」  先生が教卓で呼びかけている。  明日、『平成』という年号が終わり、新しい年号に変わる。明治が大正になったように。昭和が平成になったように。  先生はまだ何か話を続けていたが、意識の行く先を窓の外に切り替える。校舎の側に立つ桜の木が、桃色から緑色へと変わっていた。  春が終わり、夏が始まる予兆。今着ている紺色のブレザーが夏服になるのももうすぐだ。それまでには少しダイエットした方がいいかも、とぼんやりと思った。 意識の外から「さようなら」の掛け声と、それとともにガタガタと席を立つ音。 「美佳、今日なんか予定ある?」  前の席の由美が振り返って聞く。 「あ、ううん」 「じゃあ一緒に帰ろう。でさ、平成ラストのプリ、皆で撮ろうよ」 「いいね、了解」  そう答えると、由美は他の友達にも声を掛け始めた。 「ねぇ、(あきら)くん。一緒に帰らない?」  教室の外から甘えるような声が聞こえた。  明は何と答えたんだろう。  その答えは、美佳の耳には聞こえなかった。
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