変化の直前

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 年号が変わる、と言われても、いったい何がどう変わるんだろう。正直なところ実感できないでいた。   歴史の授業では何年から何年までがこの時代、その次はこの時代、そう分けられていて。  でも、江戸時代に生きていた人たちが、明治になったら一新された訳じゃない。今の自分みたいに、殆どの人が時代を跨いだんだろう。  その人たちはいったい何を思って時代が変わるのを見たんだろう。  街を歩くと、たくさんの人がいる。自分たちと同じ女子高生や、スーツを着たおじさん、やけに奇抜な格好をしたカップルや道ばたに座り込んでいるおばあさん。そんな人たちの中に自分も溶け込んで、紛れ込む。  この景色は明日になったら何か変わるんだろうか。それとも桜の木が桃色から緑色へ移り変わったように、ふと気が付けば大きく変わっているんだろうか。  平成生まれ、平成育ち。ゆとりとかさとりとか、何かと馬鹿にされることが多い世代。こういうことも百年後の歴史の教科書に載るんだろうか。誰かの作った時代の中で生きてきただけなのに。  誰かの作った枠の中で、誰かの作った名前を付けて、こういうものだって決めつけて。  明日終わる「平成」、そして始まる「新しい時代」。  また私たちは新しい枠の中に放り込まれて、新しい名前を付けられる。そうして「新しい私」が作られていく。  さようなら「平成の私」、胸の中でそう呟くと、なんだか今の自分が酷く軽く思えた。
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