変化の直前

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「ねえ、美佳、ちょっと聞いてよ」 「何?」  他の友達がプリクラに落書きしている後ろで、由美が話しかけてきた。 「智史がさ、この間女とLINEしてるの見ちゃったの!ひどくない?」  智史は由美の彼氏で、確か付き合ってまだ半月くらいだった。 「別にLINEくらいいいじゃない。自分だって男友達くらいいるでしょ」 「いや、それとこれとは別だし。でもさ、智史そのLINEで「可愛い彼女できた」って言っててさ」 「なんだ、結局それが言いたいだけね」  由美は「へへ」と笑うと、落書きをしている友達に混ざりに行った。  一ヶ月前は、違う男に振られたってファミレスで泣きわめいてたのに。もうあの人以上の人なんていないって言っていたけれど、今の様子じゃきっともう完全に忘れてるんだろう。さんざん慰めてやった甲斐があったというわけだ。  ゲーセンの後、みんなで立ち寄ったコンビニで「新商品」のポップが付いている商品を手に取った。  昔からあったチョコレート菓子を、高級素材を使って、いわゆる『プレミアム』にしたものだった。そういえば、このお菓子、子供の頃よく食べたっけな、と思い出す。  棚を探すと、下の隅っこの方に昔のままのものも置いてあった。  新しい方は棚の上の方で堂々と並べられているのに、古い方はぎゅうぎゅうと押し込まれ、ひどく肩身が狭そうに見えた。  それを眺めていると、横から由美が手を伸ばしてきて、その新商品を棚から取った。 「これこれ、めっちゃ探してたやつ!今、どこ行っても売ってなくてさぁ」 「そうなの?」 「そうだよ、いまSNSとかでも話題なんだって。後で写真上げよっと」  そう言いながら、由美はレジに向かう。  古いものには目もくれないその姿に、結局新しいものの方がいいんだな、と小さく息をついた。そして新旧両方の商品を手にして、レジへ向かった。 「あれ、美佳、なんで二つ?」 「食べ比べ」 「うわ、性格悪い。絶対こっちの方が美味しいって分かってるのに」 「うるさい」  ニヤニヤ笑いながら見てくる由美を無視して、レジで会計を済ませた。
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