変化の兆し

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 子供の頃に好きだったものが、大きくなると好きではなくなる。  そんな風に変わっていってしまうのだろうか。  じゃあ、今自分が感じていることは?  もし、それもいつか変わってしまうのならば。  「今この瞬間」よりも「これから」が大切なのだとしたら、優れているのだとしたら。  だとしたら、今の私は?  明日、「新しい時代」が始まったなら「新しい自分」にならなくてはいけないのだろうか。 「今日で終わっちゃうのね、平成も」  そう呟いた母の声で、ふと我に返る。 「お母さんはどうだったの?昭和から平成になったとき」 「そうねぇ…」  母は、記憶を探るように視線を宙に彷徨わせた。 「何だか大人たちが騒いでるなーって感じだったかしら。お母さんも中学生だったし、あんまりよく分からなかったのよ」 「で、実際変わってどうだった?」 「特に変わらないわよ、新年と同じ。初めだけわーっと騒いで、後はいつも通りよ」  肩透かしを食らったような返答に、少し驚く。 「それよりも、そのとき席替えで好きな人の隣になっちゃって、そっちの方が大変だったわ。毎日ドキドキして授業どころじゃなかったもの」  母はそう言って笑うと、キッチンへ向かった。 「そんなことより、勉強は?受験生なんだからしっかりしないと、大学生じゃなくて浪人生になるわよ」 「分かってるって」  母の説教が始まる前に、残ったお菓子の袋を手に部屋に逃げ込んだ。
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