訪れた変化

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訪れた変化

 もうすぐ、零時になる。新しい時代の始まり。  部屋の窓を開けて空を見上げた。輝いている一つ一つの星の光は、ずっとずっと昔に放たれたものだって聞いたことがある。そのずっとずっと昔に放たれた光が集って、この星空を作っているなんて、頭で理解していても、心が追いつかない。  そんな壮大さの中で、もうすぐ始まる新しい時代なんて、所詮ちっぽけなものなんだろう、そしてそれでこんなに大騒ぎしている私たちも。  これからも、世界は勝手に変わっていく。私だって変わっていく。  大学生になって、社会人になって、結婚して名前が変わったり、お母さんにもなったりするかもしれないし、おばあちゃんにだってなる。  それでも、と思う。私の中にも多分だけど、変わらないものだってあるんだろう。  桜の花が咲いて一面桃色になる春の景色が好きだったり、夏になる前にダイエットしなきゃって思うことだったり、由美の恋愛相談はダルいけど嫌いじゃなかったり、母がカレーを作る日が待ち遠しかったり、焼き魚を食べるのがちょっと苦手だったりすることとか。  変わっていくものの中で、私はどれくらい変わらないものを増やせるのだろう。  残しておいたお菓子の袋に手を伸ばす。 決意したダイエットは、新しい時代の私に任せることにしよう。  一つ口に放り込んで、また空を見上げる。  やっぱり味は断然『プレミアム』な方が美味しかった。安っぽいチョコレートと粉っぽいビスケット。それでも、その味にはなんとなく懐かしさと優しさがあるような気がした。 「美佳ー、もうお風呂入って早く寝なさーい」  部屋の外から母の声がする。 「はーい!」  お風呂に入るのが面倒くさいのに、お風呂は好きっていう矛盾したこの気持ちも、多分変わらないんだろうな、と少し笑った。  窓を閉め、もう一つお菓子を口に放り込むと、時計が零時を少し回っていることに気付いた。いつの間にか始まっていた新しい時代。身構えていた一日が馬鹿らしく思えるくらい、するりと移り変わって馴染んでいく。  窓を閉めようとしたとき、LINEの受信音が鳴った。
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