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巨悪と慈愛
『従業員室』と書かれる部屋に入る。
「従業員が居るってのかね…できればお会いしたくないもんだが。」
目に映るのは4つのロッカー。簡素なアルミテーブルとパイプ椅子だけ。質素な部屋だ。
机に目をやる。
「ペン立てと…飲みかけのペットボトル。…喉乾いたな…。」
流石に飲む気にはなれないが。
「あとは…この紙か。」
『回帰について』
・贄を死の直前の時間へと戻す為の炉
・基本的には使用を禁じる、必要時のみ、上長に許可を得ること。
・回帰の炉の鍵は上長が所持すること。
「…!」
「おあつらえ向きの装置だな…こりゃ…!」
炉。炉といえば…。
「最初の部屋か…。」
だが、問題は…
「上長…。」
…その時、クリップで挟まれたもう1枚の紙を見つける。
『回帰の炉:使用許可書』
既に、『許可』の判が押されている。
「…これをうまく使うか…。」
そして、ロッカーを調べ始める。
「1個目…黒い布と…タオルか?」
入念に調べると、扉の内側に付箋と集合写真が貼ってある。
『この世の光を反射する』
『それはあの世の窓である』
『遮らねば見えるものなし』
『頭はそこにある』
「…付箋は意味わかんねぇな。写真は…」
かなりの人数の集合写真だが、皆一様に黒いローブをまとっている。
「…このロッカーの布か。この建物の作業着…つーよりも宗教っぽいな…。」
次のロッカーを開ける。…南京錠のカギだ。あとはさっきの黒いローブ。
「…やっぱアレが、『回帰の炉』なのかね…。」
次のロッカー。黒いローブと…空の骨壺。
「…あぁ?骨壺?」
…良くわからないが取り出しておこう。そしてロッカーを閉めようとしたとき
「…バイブ音?」
中からバイブ音が聞こえる。これは…スマホだ。
「スマホ…メッセージがあるな。」
『あの子供、棺桶に押し込んでもあのグラスを手放しやがらねえ、そのまま燃やすぞ』
「…。」
スマホをロッカーに投げ入れる。ロックがかかって他のことは一切できそうになかった。
そして次の…最後のロッカーを開けようとするが
「…開かねぇ。」
ナンバーロックだ。数字は4ケタ。…4ケタ…。
「あっ。」
たしかあの新聞…。
…数字を入れてみる。
「ページの順番に描かれた数字を入れ替え…4、3、2、1」
…開かない。
「逆か?数字の順番にページの数字を…。」
8 5 4 2
…開いた。
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