朝はコーヒーとともに

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カロリナも目を瞑ってコーヒーを飲むと、くもった窓の外を眺めながら深い息を吐き出した。 「それで、鉄製のスケート靴は買えたのか?」 「スケート? ああ、フリースラントね。そう、ちょうどそのことでも話があってきたのよ」 そのこと……でも? 「今日のお昼、ちょうど13時にギルドから何人か鍛治師が来るのよ。それで子どもたち一人ひとりに合わせた靴を作ってくれることになったの!」 なんと豪華な。オーダーメイドの靴なんてそれなりにお金が掛かるだろうに。おそらく大臣たちは眩暈を起こしているに違いない。 「それで急なんだけど、貴方にもその場に立ち会ってもらうことにしたわ。午前中のご帰還以外何の予定もないでしょ?」 「いや、普通に講義がーー」 「休めばいいじゃない。その代わりに私が時間をつくって特別演習してあげるわ」 「また特別演習か……」 あの王宮防衛戦以降、カロリナはなにかとレッスンをつけたがっていた。推測すると理由は3つある。1つは国内各地で散発的に起こっていたゲリラとの衝突事件が、王宮防衛戦以降、明確な解放軍という名の下に組織だって行われるようになったこと。2つは、僕が非公式ながら一部隊を率いる部隊長の任務を得たこと。そして3つめは、僕が未だにミュージコ・フローティングーーつまり、楽器を用いた上級魔法を使えないということだ。不安定な情勢下で仮にも部隊長が十分な戦力を持たないというのは問題なわけで、懸命に努力はしているつもりなのだが、残念ながら全く成長が感じられなかった。 とは言え、この寒さの中で雪を割って(カロリナの魔法を使えば一瞬で雪を融かすことはできるのだろうが)までレッスンを受ける気にはなれなかった。それに口が割けても言葉にはできないが、カロリナのスパルタ式の教え方よりは、オーケ先生やマリーの教え方の方が僕には合っているような……気がする。 カロリナはガシャンっと音を立ててカップをソーサーの上に置いた。真っ直ぐ見つめる瞳のなかにはまた炎がほとばしっている。 「何かご不満でも?」 「いや」 少しばかり焦った気持ちを呑み込むようにコーヒーを飲む。 「ところで、他にも用事があったんじゃないのか?」
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