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「遥せーんぱいっ!今日飲みに行きましょっ」
昼休み、食堂で昼食を食べていると香川が目の前の席に座った。
香川はかつて私が教育係を務めた後輩だ。
「あれ?先輩うどんだけっすか?俺のA定食ちょっと食べます?」
「いらないし飲みにもいかないわよ」
私より3つ歳下の彼は、社内では結構人気があるようだが本人には全く自覚がないらしい。
今も食堂のあちらこちらの席から視線を感じる。
そんな奴と飲みに行くなんて、地味で目立たないように静かに暮らしたい私の人生が、嫉妬女子達に妨害されてしまうのではないか……うーん、考えただけで恐ろしく面倒だ。
「じゃあお先……わっ」
お盆を持って立ち上がろうとすると、ぐっと腕を掴まれた。突然のことで、うどんの器が斜めになり、残った汁が飛び出そうになったが、ギリギリのところでそれを阻止する。
「何すんの!」
「お願いです、今日付き合ってください」
いつになく真剣な……いや、元気がないが正解だろうか、そんな香川を見たら断ることができなかった。
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