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「ここ、オススメの店なんっすよ」
元気がなく見えたのは気のせいだったのかもしれない。あれは演技で騙されたのかもしれない。
仕事が終わり鼻歌混じりに前を歩くご機嫌な香川。
連れてこられたのは、商店街から少し道を外れた通りにある少し古びた建物だった。色褪せた赤い暖簾には『こがねや』と書いてある。
「おっちゃーん、来たよー!」
香川と私が暖簾をくぐると、カウンターの中で忙しく手を動かしていた店主らしき男がこちらに目を向けた。
「おー、ヒロ、いらっしゃい。今日は彼女連れか?」
50代後半だろうか?よく焼けた肌で体格のいい店主は香川に小指を立ててみせた。
「職場の先輩だよ。小指やめなって、恥ずかしい」
紹介されたのでぺこっと頭を下げる。
「ゆっくりしていきな、好きな席に座るといい」
ニッと白い歯を見せ、店主は再び料理の為手を動かし始めた。
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