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店を後にし、夜道を並んで歩く。
「ちっちゃい悩みだったな、私」
「本当にね」
ゴスッ!鞄で香川の後頭部を殴る。
「ってぇ!」
「もうちょっとフォローしなさいよっ」
「はいはい、女の子らしい可愛い悩みでしたね」
「っこのっ……」
鞄の二度目の襲撃をひらりとかわし、香川は星空を見上げた。つられて私も見上げる。
あと少しで平成も終わる。
そうすれば、『ゆとり世代』という差別のような言葉も風化していくのかもしれない。いや、そんな簡単なことではないだろうが、そう願いたい。
平成を振り返ってみる。
果たして私が思うようなキラキラした時代だっただろうか。
香川が思うような平成生まれにとって生きにくい時代だっただろうか。
「せっかくだからどっちが良い新時代を過ごせるか勝負しませんか?」
挑戦的に笑って香川は私を見た。
「いいわよ。勝ったら何かあるの?」
「負けた方が勝った方に人生全てを捧げる。……なんちゃって」
悪戯っぽく笑った香川に私は一言だけ返した。
「覚悟しなさい」
ーーーさようなら平成。
ようこそ、新しい時代。
待っているであろう楽しき日々に胸躍らせた。
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