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Ⅱ.
背景は黒い。
どれくらい歩いたかなど意識にはなかったし、気にもならなかった。
自分の足が雪を踏みしめて行くのをひたすら見つめていた。
相変わらず竜神の怒りは収まらないらしい。
冷えきった風がなけなしの体力を奪っていき、一歩踏み出すのさえ恐ろしく億劫だ。
だが、足を止めるという選択肢はまるで存在していないかのように姿を見せない。
変わらない木々の並びが不安をかきたてる。
私の行く先には何かあるのだろうか、どこにも辿り着かないのではないか。
もしかすると、終わりのない道をぐるぐる回っているだけなのかもしれない。
寒い。
肩から先に腕が付いていないように感じる。
足もまともに動いているかどうか怪しい。
目の前が徐々に薄暗くなっていき、そのうちにチカチカと光る雪が飛び交うようになった。
雪はみるみる増えて視界を白く塗っていく。
眩しさに目を細めたが意味はなかった。
明滅する雪が激しさを増し、意識までも染め上げようかというそのときーーーー
白い光のなかにポツンと小さなオレンジ色が現れた。
それは光る雪とは違い、ぼんやりと暖かみのある色で、妙に安心感を覚える灯りだった。
オレンジ色を見つめているうちに、目の中の雪は消えていった。
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