クロイイヌ

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のどかな午後。 近所の公園で小さな子供達の遊ぶ声が我が家の庭まで響いてくる。 そんな昼下がり……庭に黒い雌の犬が迷い込んで来た。 恐る恐る頭を撫でると犬の首に『M』のネックレスが。 パッと見にも高価そうなネックレス。 夫からプレゼントされたMのネックレスを 普段から身につけている私はなんだか親近感のようなものを感じた。 近所の家で飼われているんだろうか。 「あなた……何処から来たの?」 犬は尻尾を振るばかりで一向にその場を離れる気配が無い。 子供の頃から動物を飼った事の無い私には これが何という種類の犬なのか皆目見当もつかない。 不思議と鳴かない犬だった。 仕方なく近くのコンビニでドッグフードを買って来て与えた。 何も食べていなかったのか、こんな美味しい物食べた事も無いと 言わんばかりに犬はそれを貪り喰った。 でも、何日か我が家に通って来るうちに 少しずつドッグフードを喰い渋るようになっていった。 或る日いつものように庭へやって来た彼女に ドッグフードを与えていると部屋で電話のベルが鳴った。 昼時だった。 ーーきっとお義母様に違い無い……。 電話は案の定義母からだった。 尋問に一通り答え溜息をつきながらリビングに戻って来ると 母から嫁入り道具の一つとしてプレゼントされた お気に入りの皿から黒い犬は私の食事をペロリとたいらげていた。 まるで始めから皿に料理なんか乗っていなかったみたいに見事な食べっぷりに 私は怒るどころか自然と笑みさえこぼれた。
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