第1章

13/25
前へ
/25ページ
次へ
トランクに詰め込んでいた釣り竿や、 他の釣り道具類が、 崖のあちこちに散乱していた。  手頃な竿を杖代わりにして、 微かに見える崖の上を目指し、 這いながらわずかずつ登って行った。 痛みを堪えて前進する。 しかし、 二~三メートルも進まないうちに、 喉がカラカラに乾いてきたので、 手当たり次第にコーラの空き瓶、 缶コーヒー、 ジュースを漁った。 が、 中から出てくるのは砂ばかり。 仕方なくわずかに生えている草をしゃぶったが、 単に苦いだけで、 かえって渇きが増すだけだった。  裸眼〇・〇二の視力で周囲を見渡すと、 ぼんやりとではあるが、 右前方三十~四十メートル離れた所に、 森か林のような木々が生い茂っている一帯が見えてきた。 苦痛と戦いながら、 一~二時間も費やし、 やっと大きな木の根っこに身体をもたれかけて、 気持ちのいい休息が出来た。 まるで、 天にも昇るような心地良さだった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加