第1章

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 だが、 まさにその時だった。 奇妙な経験したのは……。  左に五十~六十メートル離れた所に、 崖の上からツツー降りて来た男女が見えたのだ。 二人とも冬山の登山姿をし、 楽しそうに話をしている。 その話の一語一語を明確に聞き取れる。 私は、 ここぞとばかりに大声を張り上げた。 「助けてぇー、 助けてぇー助けてぇー、 助けてぇー……」  何度も何度も出せるだけの大声で叫んだが、 一向に気付く様子もない。 二人は、 仲良さそうに十分程話していたのに、 その姿は忽然と私の視界から消えしまった。
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