第1章

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 突然、 背筋に大きな氷の塊を入れられたように,頭の先からつま先まで、 ぞくぞくと寒気がした。 同時に、 何とも表現出来ないおぞましい恐怖と嘔吐を感じ、 その場で吐いてしまった。 そんなにも離れた場所にいる二人の、 細かな表情や囁く声が聞こえる筈があり得ないからだ。  きっと、 この辺で遭難したであろう自縛霊達なのに違いないと思われる。  今まで私には霊感なぞ全然ないのに、 細かい所まで見えたのは、 何かの悪い予兆なかも知れないと思うと、 心底薄気味悪かった。    疲労困憊し木の根元に凭れてから、 一~二時間後であろうか、 遥かかなたの崖上で人声を耳にした。 思いっ切り振り絞る声で助けを呼ぶと、 私の存在に気付いてくれ、 救急車の手配をして下さったらしい。
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