第1章

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 そこには、 ガードレールが十メートル位なく、 道路を挟んで反対側に充分車を駐車できる草地があった。 この世で最後の一升瓶に入った、 お気に入りの辛口日本酒。 今まで辿って来た人生をあれこれと思い出しながら、 ゆっくりとしかも陰鬱な気分で寂しく飲み干した。 元来、 三合も飲めば酔う私が、 死を本当に覚悟する為には、 一升も飲み干さなければならなかったのだ。  やはり、 死に向かってダイブする激甚な恐怖を完全に払拭するには、 酒の神バッカスが持つ聖なる力が不可欠であったに違いないだろう。
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