第1章

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 いよいよ、 決行時には、 まだ午後六時頃にもかかわらず、 『秋の日は釣瓶落としの如し』の諺通り、 もう辺りは漆黒の闇に覆われ、 時々行き交う車が照らすライトが眩しく感じた。  私は、 ニュートラルのままでエンジンを思いっ切り咆哮させ、 先ずギヤーをローに入れ、 直にセカンドにチエンジしてアクセルを床まで踏み込み、 道路を突っ切って谷底めがけてダイブした。 ヘッドライトに映った星達の、 絵にも描けぬ極上の美しさ。 幼い頃から今日までの楽しい思い出だけが、 スローモーションがかった走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
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