第1章

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 そして間もなく意識も身体も、 愛車と共に漆黒の深い奈落の底に吸い込まれて行った。    それから何時間経過したのだろうか? 混濁していた意識が、 現実世界を少しずつ認識し始めた。 近視の為眼鏡をかけていたが、 落ちる途中でフッとんだのだろう。 裸眼でぼんやり見えたのは、 砂防ダムの近くに、 タイヤが曲がり原型を留めない程ペシャンコに大破し、 底を上に向けた愛車であつた。 まだゆっくりとタイヤが回転していたので、 落ちてから余り時間が経過していない。 と言う事は、 落下後直ぐに意識を回復したに違いない。  幸いにも、 愛車は、 映画やテレビで見るような炎には包まれていない。
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