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皇太子
宮さまには2歳年上の兄がいる。この兄が次期天皇である。生まれた時から、皇太子として将来を期待されている。ただ、弟宮と違って学校内で恋人を見つけたことはなかった。性格的なものなのか、将来背負う立場なのか、女の子たちの方が彼を避けていた。
大学を卒業しても彼女を見つけることがない皇太子は、公務に追われた。対面するのは、両親以上に歳を取ったおじさまばかりだ。各界の著名人が軒並み顔を連ねる儀式では、年寄り臭くてとても出会いどころではない。弟宮とは対極の存在である。
ある日、天皇杯大会で総裁として出席した会場の中、一人の女性に目を向けた。撮影クルーに囲まれた彼女は、実況放送をしている。試合の合間には、選手や観客にインタビューをしている。そのテキパキとした仕事ぶりに感心した皇太子は、彼女の名前を職員の方から聞き出した。
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