大学生活

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それからは、宮さまの口利きで選考委員会の目に留まった彼女の作品は宮さまを含む一族の短歌と共に新聞に発表されるようになった。こうやって、この女子学生の皇室入りへの足掛かりが作られ始めた。 同級生である二人は、同時に卒業することになる。宮さまは御所へ戻ると、両親に彼女を紹介した。彼女の名前は、句会で知っている。「ようこそ!貴女はいつも素敵な句を詠まれますね」と母宮は彼女にそう声をかけた。「ありがとうございます」と彼女も答える。 リビングルームでひとときの団欒を過ごすと、すっかり心が打ち解けていた。夕食も一緒に済ませて、彼女を賃貸の部屋まで車で送った。こうして実質的なカップルとなった二人は報道陣の噂にもなった。宮さまは、報道陣の質問をのらりくらりとかわした。彼女も「私から話すことはありません」と切り返す。学生たちからも、「あの二人は結婚するのかな」と二人のことを噂していた。 普通なら、三年生になると就職活動をするのだが、宮さまは公務に就くからそんな必要がない。問題は彼女の方である。彼女は就職する気があるのか、周囲の人が気をもんでいた。「私は、大学に残ります」と平坦と答えたまま報道陣を振り切った。 いよいよ大学を卒業することになった。宮さまはイギリスの大学へ留学した。彼女は大学院生となった。離れ離れとなった二人はインターネットで通信することになった。     
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