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水星軌道の内側をめぐる小惑星が発見され、各国がこぞって探査機を派遣した。そこで人類は思いがけないファーストコンタクトを果たした。
太陽だ。
かと言ってB級SF小説のように天体そのものが意思疎通を持ちかけてきたわけではない。
第0番惑星の表面に原始的な菌類が見つかり、その成因を探っていくうちに、太陽光線の非論理的な作用が明らかになった。
科学者たちは未だに特定の波長を分類できないでいたが、とりあえず日照が原始大気中の生命合成を促進したと結論付けた。
医学、生命科学、化学、あらゆる角度から太陽光と地球生命体の相互作用を見直した結果、世界規模の少子化に歯止めがかかると思われた。
すなわち、惑星ヴァルカンにおける処女懐胎である。聖書に先例が記録されているとはいえ、それが事実であるとわかると世界がひっくり返った。
倫理もへったくれもない。絶滅に瀕した人類は破れかぶれの方法を縋る思いで実行に移した。
すったもんだの挙句、惑星ヴァルカンに待望の一子が生まれた。
女の子だった。
「うるさいわね。男がポンコツなんだからしょうがないじゃない!」
「そーよ。いずれあんたらは滅ぶんだから」
「貴男はスバールバルの世界種子庫で冷凍保存されてなさい。絶滅危惧種なんだからねッ!」
女たちは早々と三下り半をつきつけ、太陽をめざした。
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