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太陽の季節
怒髪冠を衝く火炎が漆黒を焼き尽くさんばかりだ。
見上げれば閃。
振り向けば輝。
見まわせば白。
河口のようにとうとうと噴き出す光が星座を洗い流してしまった。
遮光壁を透してもなお、前方スクリーンには輪郭線一本、映っていない。
それでも乗客たちは喝采を惜しまない。
太陽渡航船トゥオネラ号の就航がオーロラ観賞を駆逐してしまった、と言われるほどの人気ぶりだ。
「みなさん。まもなく本船は水星軌道を通過します。太陽系第0番惑星ヴァルカン到着時刻は……」
肌も露なアテンダントが陽気に告げると、デッキは若い女の子たちの嬌声でいっぱいになった。
「ああ、なんて雄大でセクシー」
「蕩けちゃう」
トロピカルなビキニに包まれた肢体が遮光ガラスにぐいぐい押し付けられる。貞操を捧げる相手は恒星だ。
女子の女子による女子のためのパッケージツアー。
企画したのは国連優生局だ。
世界史の最晩年。
草食化、仙人化を通り越して化石化した男子に見切りをつけ、太陽系原生種との交配に望みを託した。
太陽が生命の源である神話や伝承などで謳われていたが、それが形容ではなく直接原因であるとは誰が予想しただろう。
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