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現場に着くと、そこは地獄だった。
泣き喚く子どもの声に、恐怖に震える若い女性。
近くの歩道を行く通行人は、スマホを片手に写真を撮っている。
湊人は路地の前で、拳を握り締めている子どもを見かけた。
「ちょっといいかな」
子どもは血走った目で、湊人を睨む。
「そんなに警戒するな。お前の気持ちは分かる」
湊人は子どもの頭を撫でる。
「分かるわけないだろ。僕の気持ちなんて」
「分かるさ。お前は小六ぐらいだろ。俺は小三のときに、親父が死んだ。いや、殺された」
子どもは、湊人の顔を、じっと見つめる。
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