警視庁第十九課 『切り裂きジャックの復活』

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 東京郊外にある、人がいなくなって間もない廃ビルに、二つの人影が揺れる。 「どうしてだ、どうして俺を狙う! あんたの注文どおり、俺は動いただろう!」 「だけど私は……。私を狙ってくれとは一つも言っていませんよ」  ナイフを喉元に突きつける男性は包帯の奥から、眼光鋭く怯える男を睨む。 「安心してください、命まではとりませんよ。ただ、脚本の変更を伝えに来ただけです」  男性――彼は”犯罪脚本家”という異名を持つ――は、ナイフをしまって近くにおいてあった机の上に座る。  男性は当然のように、机の上のホコリを丁寧にぬぐった。 「本来ならば、もう一つ事件を起こしたかったんですけどね。彼らが僕の存在に気付いたみたいですから、脚本の修正は仕方がないかと。さて、あなたには、小型飛行機で海外へ渡航していただきます。もちろん、必要な書類や荷物はこちらで用意します。いいですね」  確認を求める口ぶりだが、有無を言わせない、殺気のこもった圧力。  それに圧されて、キャルビンは首を縦に振った。 「いいでしょう。――踊りなさい、キャルビン・フォールズ」
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