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◇
ちえが朧げな過去に思いを馳せていると
窓の外ではいつの間にかちらちらと雪が降り出していた。
「あ、降ってきた!」
夜空に舞う風花に、ちえは急いで窓を開けた。
そして、その雪の結晶の中から、
これ、と思った一つを選んでそっと手に受けると
嬉しそうに微笑む。
「誕生日だから絶対に来てくれると思ってた!」
そして、厚手の手袋をつけた掌に、息を吹きかけないように
すこしばかり下を向いてこうつぶやいた。
「おかえりなさい、お母さん。」
<了>
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