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長身蓬髪、藪にらみ気味の男が気がつけばふらりと襖の横に立つ。
「…お久しぶりです、…鬼鬼鬼瓦警部。」
「お前、入り口で待っていろと…。」
「ああ、構わん。」
「しかし、警部。」
「そいつは、あれだ。まぁ、いいんだ。お前は下がってろ。」
苛立たしげに投げられる言葉に巡査はしぶしぶといった体で襖を閉める。
「あの、警部さん。こちらの方は?」
「…始めまして、銀大地と言います。…警部とは古い知り合いでして。」
「別に俺はお前と仲良くしたいわけじゃないんだがな。」
「…そんな風に邪険にしないでくださいよ。…ええ、何と言うか、私、探偵でして。」
[#2]
「厄介な事件のようですね。」
妙に眠そうな顔で銀大地はつぶやいた。
「まったくだ。犯人は関係者の中にしかいないはずだ。
だが、それでは説明のつかんことが多すぎる。」
「犯人が複数いる、共犯という線は?」
当然のことを探偵は、言い放つ。
「たしかにその線も消えちゃいないさ。
だが、可能性は低いだろう。」
「どうして?」
苦虫をかみつぶしたような顔をさらにしかめながら、
鬼鬼鬼瓦警部は少しの間、逡巡。
だが、結局は覚悟をしたように重たい口を開く。
「犯人の痕跡があるんだ。」
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