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高速道路に乗る頃には、僕は前日、興奮して眠れなかった事と、あの学校へ通わなくて良くなったという事への安堵の余り、居眠りしてしまっていた。
移動中に富士山が間近に見られるかなって、ちょっと期待していたのに、目が覚めると、車は丁度、岡丸インターチェンジに滑り込んでいた。
インターを降りて、下道を移動中に、お父さんが左手の小高い山を指差した。
「あれが、これからお前の通う高校だぞ」
そう言われて、僕は車窓から外を覗き込んだ。
小高い山の中腹に、その学校はあった。
校舎の下の部分は、手前の林に隠れて良く見えないし、ここからではちょっと距離があって、校舎自体も小さく見えるけど、どうやら四階建ての校舎が二棟の、白くて比較的最近建てられた学校だなと思った。
朝の通学は大変そうだな、などと思いながらも、それでもセント・バナード学園に通う事を考えると、自然と笑みがこぼれてくる。
葛龍川を直下に臨む、木々に囲まれた真新しい学び舎。
毎日のように、光化学スモッグ警報の声が、スピーカーから流れていたあの街とは大違いの澄んだ空気、こんなに青かったのかと感激してしまう程にきれいな空。
僕は、早くこの学校に通いたくてうずうずしてしまった。
そこから車で五分ほどで、僕達は新居に到着した。
十二階建てのマンション。ここのすぐ脇にも、葛龍川が、その名のごとく、葛の葉が両岸の堤防を覆い、龍のようにうねりながら静かに流れている。
ここからなら、学校まで歩いても二十分掛からなそうだ。
僕は益々嬉しくなった。
だって、今までは、行きたくもない学校に、電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、一時間半も掛けて通っていたのだから。
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